2008年6月14日土曜日

Y君のこと

Y君は長崎市の出身だった。高校の敷地内にある寮に入っていた。県外から来ている生徒はほとんどこの寮で生活をしていた。時々寮におじゃましていたが、その時にいろんなジャンルの音楽を聞かせてもらった。Y君のお気に入りはビートルズのリンゴ・スター。私は正直言って当時のビートルズの音楽にそんなに感動していたわけではないが、彼の熱意にほだされて一応ファンということにしておいた。ちょっと話はずれるが、そういえば小さい頃から環境に順応することには才けていたように思う。この頃は養父の仕事がうまくいっておらず最低の生活をしていた時期だったが、別にぐれるわけでもなく、相対的にいい子だったと思う。相手に合わせることが上手だったというより、変に対立を起こすようなことが嫌いだったのだと思う。今もそれは変わっていない。良くいえば平和主義、悪く言えば事なかれ主義かな。あまり付き合って面白い人間ではないだろうと思う。よくボーっとしているとか、反応がないとか言われるが、そう言われるとしめしめと心の中で思っていたりする。してやったり。心の防衛本能がちゃんと働いている事に安心したりする。初めて告白するが本当はとっても壊れやすいガラスの心なのだ。誰も信じないだろうけど。心のアンテナはチョー敏感だけど、途中で減衰器をつけて感度を落してるなんて誰も気付いていない。

2008年6月1日日曜日

運命の出会い

ドアを開けると、40畳ほどの教室のど真ん中に、赤いドラムセットが組まれており、マッシュルームの髪型をした少年がひたすらにスティックを打ち下ろしている姿が目に飛び込んできた。その印象は強烈で、心臓をつきさすかのような衝撃を私に与えた。無駄のない最小限な体の動きの中から生み出される、無限の広がりを感じさせる音の響きや音圧は、その視覚と聴覚とのアンバランスさ故、ある種超マジックを目の前で見せられた時の驚きの感覚に似た異次元空間へと私を引き込んだ。その日のY君との出会いが、私のその後の人生の転機となったことは間違いない。JAZZという悪魔との付き合いはこうして始まったのだ。